海で読む本は,海に関係した本にしよう.そう思ってスーツケースに入れた本:コロンブス航海誌,十五少年漂流記,どくとるマンボウ航海記・・・
まずはコロンブス航海誌,彼の最初の航海について日々の記録が綴られています.1492年8月3日から翌年3月15日まで.一方私の航海期間は2018年12月30日から翌年3月15日まで.航海の終了日に加え曜日も一致していて,勝手な親近感を覚えました.
航海前に少し読んでおき,あとは1日ずつ同じ日の航海誌を読む.読み終えたとき,私の航海も終わりを迎えるわけです.
まず驚くのはコロンブスの航海期間の長さ.私の約3倍の224日間です.もちろん陸上で過ごした日々も含まれますが,まさしく大冒険です.コロンブスは律儀に毎日記録を残しています.
海での記録は主に「今日はどの方向にどれだけ進んだか」.今日のような世界地図やGPSもないなか,波や風向きに翻弄されつつ目的である未知の陸地に向かっていきます.乗組員が航程を長く感じないように,実際進んだよりも少なめの距離を報告していたようです.無事に帰れる保証もなく海に出ていた当時の大変さがよくよく感じられます.
コロンブス一行はバハマ諸島やキューバ島を探検しますが,危険の多い航海に比べ陸上が安全なわけではありません.原住民からの大歓迎もあれば敵意をもって迎えられることも.そして身内のはずの乗組員の裏切りまで.莫大な利権がからむ探検航海をコロンブスは生涯に4回行っていますが,常に大きな困難を伴ったようです.
15世紀の航海に比べれば,現在の航海は格段の進歩を遂げています.船内情報で目的地の緯度経度,船のスピードや到着予定時刻まで.コロンブス一行を思えば,長期航海の大変さも少し和らぎます.
さて,並行して十五少年漂流記を読み始めます.こちらの著者はフランスのジュール・ヴェルヌ.今回フランス船に乗船することから話のタネに持ち込みました.
太平洋の無人島に遭難した少年たち.無事に帰る方法を求めながら,島でたくましい生活を始めます.15人もいれば仲違いは起こるもので,しかし帰るためにも少年たちの結束が重要になります.少年たちの出身はアメリカ・イギリス・フランス等ですが,中でもフランスの少年が大いに活躍します.
これはフランス人に人気があるだろう,と思ってフランス船の人たちに聞くと,ヴェルヌは知っているがその作品は知らない,との意外な答え.
その後,原因を本の解説に見つけることができました.どうもアメリカ・イギリスの少年があまり活躍しないため,米英では人気が出なかったそう.一方で日本人には少年の出身は問題でなく,優れた翻訳により作品の質も高まったため,日本で古典として残ったそうな.
最後にどくとるマンボウ航海記について.作者の北杜夫は東北大学出身で,マンボウ青春期には大学の寮生活も記されています.こちらの航海は寄港地が多く,船医としての生活と世界各地の体験談に満ちています.
虚実入り混じったユーモアたっぷりの記述に,航海そのものの楽しみが伝わってきます.船酔いしたらどうするか,船で通用する特殊用語とは,など実用的な面もありました.
読み進めていたコロンブス航海誌も終わりが近づきます.私の航海もそろそろおしまいです.帰国途中,タイのバンコク空港を経由しました.バンコクの寺院ワット・アルンは三島由紀夫「暁の寺」に描かれています.読みたい本がまた増えました.
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