2020/11/23

理学部を選んで(その1)

「自然に興味があれば理学部へ,人間に興味があれば工学部へ」そう聞いた高校生の私は,迷うことなく理学部受験を決めた.当時,愛知万博を訪ねたことや京都議定書のニュースに触れたことで,地球環境に興味を持つようになった.もう少し人間に興味を持ってもよかったし(今は興味あり!),理学部では就職の幅が狭まることを真剣に考えてもよかった.

それでどこの大学を受験するか.進学校の雰囲気もあって前期は東大,後期は東北大を志望した(名古屋大は後期の設定がなかった).センター試験を受けて,東大の足切り点数が公表される.およそ5点,足切り点数に達していなかった.前期試験は受けられず,浪人も覚悟して3月の仙台へ.

後期試験の受験会場は暗い雰囲気が立ちこめていて,しかし前期の分も一生懸命筆記試験に臨む.結果発表日の朝,自宅のパソコンから合格者一覧にアクセスし,そこに自分の受験番号を見つける.喜びもつかの間で,すぐに引っ越し準備が始まる.

大学生活がスタートし,理学部地球科学系の入学者約50人と顔を合わせる.化石好きや鉱物好きの人が多い印象で,自分はそのどちらでもなかった.幸いか高校で地学を履修した人は少なく(私も物化),大学の地学に対するスタートラインは大きく違わないようだった.

同じころ部活・サークル選びがあって,「地球環境」に興味の集中していた私は環境活動サークルを見学する.そのサークルで先輩や同期と話すと,私のように理学部の人もいれば,経済学部や工学部の人もいる.地球環境=理学部だった当時の私にとって,現実はイコールではない(地球環境は広い分野に及ぶ)ことを実感して,高校でそう気付いていたら違った進路選択をしたかもしれないと感じた.

そうして進路に若干の迷いを覚えながら,地学関係の講義を受講し,一方で地域や大学の中で環境活動(例えば資源回収やごみ分別)をしていく.学部3年次で地球科学系は岩石鉱物・人文地理・地質古生物にコースが分かれるため,まずその選択を迫られることになる.各コースの実習をひと通り体験してみて,地質調査に一番興味を持てたことから,地質古生物コースを選択する.

しばらくして卒論課題を選ぶ段階になる.ちょうど「過去の環境変動」を扱う課題がいくつかあり,教員の話を聞いた上で「微化石」を主対象とした研究テーマを選択する.それまで微化石というキーワードは十分に知らなかったので,やはり環境変動という言葉に惹かれたのだと思う.

卒論で忙しくなる中,環境サークルの活動も続けていた.その頃感じていたのは,活発に動ける(地域や大学を巻き込むような)人には敵わないなあという気持ちだった.環境サークルは全国にネットワークがあり,そこでは起業家や環境NGOに就職する人もいる.進路に迷いもある中で,環境活動を仕事にすることは向いていないように感じた.

なんとか卒論を提出して,周囲と同じように修士課程に進学する.幸運にも国際的な研究航海に乗船する機会を得て,初めて海外を経験すると同時に世界トップクラスの研究者を目の当たりにする.彼らが目を輝かせて研究する姿に,英語は分からないものの,漠然としたあこがれを感じるようになる.帰国してから周囲に就活という雰囲気が漂いはじめても,それよりも博士課程への進学を希望するようになる.

今振り返れば,英語論文も公表していないのに,とても見通しが甘かったと思う.学振の特別研究員(博士課程において奨励費や研究費が得られる)は不採用Aで,根拠のない期待の分,とても落ち込んだのを覚えている.とはいっても目立った就活はしておらず,そのまま博士課程に進学する.(その2につづく

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