英語Tips

 研究を進めるために必要不可欠な英語.具体的に英語が必要な理由を挙げてみます.

1.過去の研究を調べるため(Reading)

研究分野によって歴史は違っても,大多数の文献は共通言語=英語で記述されています.英語力によって先行研究を理解することができ,先人と同じ研究をしないこと,先人の成果を適切に引用することにつながります.

2.自らの研究成果を広く公表するため(Writing)

先行研究を参照しながら,実験を進め考察を深めたら,その発見を論文として執筆します.新たな成果を過不足なく伝えるために,英語を書く力が必要になります.自動翻訳や英文校閲に頼りすぎると,伝えたい内容にずれが生じやすくなります.

3.世界中の研究者と協働するため(Listening & Speaking)

国内で研究する場合でも,海外研究者との密な連携や留学生とのコミュニケーションが重要です.各研究者が持つ独自の視点を組み合わせることが,新しい発想や成果の創出に直結します.英語を聴く・話す力をつけてコミュニケーションを深め,まず仲良くなりましょう.Eメールのやり取りを重ねれば,読む・書く力も一定程度向上します.

ここで大切なのは,1〜2と3は別個に考えた方がよいということです.つまり論文を読む・書く力と英語を聴く・話す力は必ずしも一緒には伸びません.それぞれの力を伸ばすために,私が効果的と感じた方法を紹介します.

  • 洋書の多読
    洋書といっても原著を読むのは大変で,それは語いが圧倒的に足りないからです.それでも洋書に触れるには,Graded Readers(Penguin ReadersやOxford Bookwormsなど)がオススメです.Graded Readersには複数のレベルが設定されていて,レベル毎に用いられる単語が制限されています.つまり簡単なレベルから読んでいけば,徐々に読む力をUPできます.大学や地域の図書館で借りることができます.

  • 単語リストの活用
    日本の小中学校で習う漢字数は約2000あります.これだけ覚えれば新聞を読むのにそれほど困りません.実は英語についても,そうした単語リストが存在します.1つはNew General Service List(約2800単語),もう1つはNew Academic Word List(約960単語)です.これらの単語を優先して覚えれば,実用的な英語力がUPします.

  • ひたすら論文を読むこと
    基本的な英語力(単語・文法)を向上させながら,専門的な用語も身に付けていく.論文を読むにはどうしても慣れが必要です.一般にShort paper(Nature, Scienceなど)は情報が限定的なので,Full paper(例えばElsevier系列)のintroductionを読むと分野への理解が深まりやすいです.

  • Google Scholarの活用
    なんとか英語を書き始めたら「その英語表現は実際に使われているか?」を確かめることが大切です.Scholarは論文検索だけでなく,英語表現の検索にも役立ちます.引用符(")で囲むとフレーズ検索ができます(例えば"recent global warming"で検索).他にも,Grammarlyというサービスを使うと英文チェックができます.

  • 英語の多聴
    多読と並んで多聴も有効な方法です.まず英語のスピードに慣れることが大切です.私はPodcastサービスの中でBBC 6 minute English(音声)やCNN10(映像)を活用していました.10分以内だと集中力も保ちやすいです.また,TED Talksであれば関心のあるテーマで英語を聴くこともできます.

ここまでの方法に共通するのは,なるべく日本語を使わないということです.読む・書く・聴く・話すにかかわらず,英語→日本語→英語よりは英語→英語を目指した方がインプットとアウトプットの効率が上がります.英和・和英辞書を引く回数を減らすことが「英語を英語のまま理解する」第一歩になります.

最後に矛盾するようですが,英語力を伸ばしたいと思ったら,まず日本語力を高めるのが近道です.どんな人でも,英語力が母国語の能力を上回ることはありません.逆にいえば母国語の能力を高めた分だけ,英語力の伸びしろが大きくなります.そのためには読書が王道です.オススメは齋藤孝「読書力」と藤原正彦「国家の品格」です.

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