2019/06/09

南大洋航海記〜おまけ〜

海で読む本は,海に関係した本にしよう.そう思ってスーツケースに入れた本:コロンブス航海誌,十五少年漂流記,どくとるマンボウ航海記・・・

まずはコロンブス航海誌,彼の最初の航海について日々の記録が綴られています.1492年8月3日から翌年3月15日まで.一方私の航海期間は2018年12月30日から翌年3月15日まで.航海の終了日に加え曜日も一致していて,勝手な親近感を覚えました.

航海前に少し読んでおき,あとは1日ずつ同じ日の航海誌を読む.読み終えたとき,私の航海も終わりを迎えるわけです.

まず驚くのはコロンブスの航海期間の長さ.私の約3倍の224日間です.もちろん陸上で過ごした日々も含まれますが,まさしく大冒険です.コロンブスは律儀に毎日記録を残しています.

海での記録は主に「今日はどの方向にどれだけ進んだか」.今日のような世界地図やGPSもないなか,波や風向きに翻弄されつつ目的である未知の陸地に向かっていきます.乗組員が航程を長く感じないように,実際進んだよりも少なめの距離を報告していたようです.無事に帰れる保証もなく海に出ていた当時の大変さがよくよく感じられます.

コロンブス一行はバハマ諸島やキューバ島を探検しますが,危険の多い航海に比べ陸上が安全なわけではありません.原住民からの大歓迎もあれば敵意をもって迎えられることも.そして身内のはずの乗組員の裏切りまで.莫大な利権がからむ探検航海をコロンブスは生涯に4回行っていますが,常に大きな困難を伴ったようです.

15世紀の航海に比べれば,現在の航海は格段の進歩を遂げています.船内情報で目的地の緯度経度,船のスピードや到着予定時刻まで.コロンブス一行を思えば,長期航海の大変さも少し和らぎます.

さて,並行して十五少年漂流記を読み始めます.こちらの著者はフランスのジュール・ヴェルヌ.今回フランス船に乗船することから話のタネに持ち込みました.

太平洋の無人島に遭難した少年たち.無事に帰る方法を求めながら,島でたくましい生活を始めます.15人もいれば仲違いは起こるもので,しかし帰るためにも少年たちの結束が重要になります.少年たちの出身はアメリカ・イギリス・フランス等ですが,中でもフランスの少年が大いに活躍します.

これはフランス人に人気があるだろう,と思ってフランス船の人たちに聞くと,ヴェルヌは知っているがその作品は知らない,との意外な答え.

その後,原因を本の解説に見つけることができました.どうもアメリカ・イギリスの少年があまり活躍しないため,米英では人気が出なかったそう.一方で日本人には少年の出身は問題でなく,優れた翻訳により作品の質も高まったため,日本で古典として残ったそうな.

最後にどくとるマンボウ航海記について.作者の北杜夫は東北大学出身で,マンボウ青春期には大学の寮生活も記されています.こちらの航海は寄港地が多く,船医としての生活と世界各地の体験談に満ちています.

虚実入り混じったユーモアたっぷりの記述に,航海そのものの楽しみが伝わってきます.船酔いしたらどうするか,船で通用する特殊用語とは,など実用的な面もありました.

読み進めていたコロンブス航海誌も終わりが近づきます.私の航海もそろそろおしまいです.帰国途中,タイのバンコク空港を経由しました.バンコクの寺院ワット・アルンは三島由紀夫「暁の寺」に描かれています.読みたい本がまた増えました.

2019/06/03

JAL50回〜その2〜

跳び飛びの旅も2日目,午後には沖永良部島を離れるので,観光タクシーをお願いしておきました.ひとり旅ですが,3時間で島の名所を案内してもらいます.島独特のサンゴ礁地形やウミガメを見て,樹齢120年を数える日本一のガジュマルも訪ねられました.限られた時間ながらよい経験をしました.

さて帰路のフライトですが,奄美群島のホッピングです.徳之島,奄美大島,そして鹿児島へ.徳之島も奄美大島も初めてですが,空港を出るほどの時間はありません.奄美大島では観光者も多く,すぐ離れるのは残念!ですが,またいつか訪れようという気持ちに変えます.

鹿児島空港でしばらく滞在し,夜に羽田空港に向かいます.着陸の瞬間はなんとも言えない高揚感で,当分飛行機に乗らなくていいなと感じます.翌日友人と会ってから,高知空港へ戻ります.このホッピングツアーで一気に50回に近づきました.

その後は回数を重ねつつ,45回でいよいよ12月へ.回数を稼ぐために福岡―宮崎へと往復します.北九州いのちの旅博物館と宮崎県立美術館へ立ち寄り,ちょっと観光します.宮崎の手羽先やチキン南蛮はおいしかった.

49回となり,最後は12月30日.長期の海外出張のため,高知―羽田を利用します.羽田空港に着陸したとき,50回到達の感慨が湧いてきます.これから海外に行くので出張の始まりなのですが,どこか達成感に包まれた瞬間でした.

なんとか到達した年間50回,やってみると結構大変でした.周りで目指す人がいても,あまりお勧めできません.時間に余裕があれば海外や国内でゆっくり過ごして,50000ポイントで達成する方が優雅です.

しかし敏腕ビジネスマンにならない限り年間50回乗ることはまずないと思うので,(JALのHPには年間100回の会員クラスもありますが・・)一生に一度の経験としては貴重な体験だったと考えています.

50回の搭乗中,JALの都道府県シールも集めていました.CAさんの出身都道府県のシールを頂くのですが,35都道府県を入手しました.高知県のシールを入手したり,宮城県出身のCAさんとお話したり,こちらも小さな楽しみでした.

そんなわけで,2019年は上級会員の恩恵を受けています.優先搭乗やラウンジは少し身の丈に合わない感覚です.飛行機利用時の時間を有効活用できるので,趣味の読書に充てています.さて,次はどこへ行こうかな.〈もどる〉〈おわり〉

2019/06/02

JAL50回〜その1〜

大学時代,帰省の手段には頭を悩ませました.仙台と名古屋,手段はたくさんあります.飛行機,新幹線,高速バス,フェリー,青春18きっぷも試しました.

体力がある内は高速バスもよいですが,そのうち新幹線を使うようになります.時間があるときは,広いスペースで自由に過ごせるフェリーがお気に入りでした.その点,飛行機には縁がありませんでした.早めに予約しないと新幹線より割高だからです.

高知に引っ越し,状況は変わりました.たくさんあった手段の中で飛行機が際立ってきます.新幹線は特急列車で岡山まで行かないと利用できません.関東圏に向かうには羽田空港が便利で,飛行機の利用が増えます.

これまで飛行機を利用するのは研究で海外出張する機会がほとんど.海外に行くとき,航空会社のいわゆる上級会員が優先搭乗を受けたりラウンジに入れたりするのはうわさで知っていました.学生の間はそこまで飛行機に乗る機会もなくうらやましい程度でしたが,ついに上級会員を目指すチャンスが訪れました.

周囲の研究者には公的な出張のみで上級会員に達する人もいますが,私には当てはまりません.自分でお金を出して,飛行機に乗る.言い換えれば修行が必要になります.JALの場合は,年間50000ポイントか50回が到達目標です.

50000ポイントは主に海外など長距離フライトで稼いで,50回は国内の短距離フライトで回数を重ねるのが一般的なようです.1月〜12月のカウントなので,修行するなら早めがベストです.2018年3月の時点で私はどちらを目指すべきか,どちらにも可能性のあるポイントや回数でした.

いずれにしても費用はかかりますが,海外旅行をするか国内か.海外なら長期滞在したいけど,ちょっと難しそう.国内で回数を稼ぐ方法について探ります.

JALではちょうど"跳び飛びの旅"という飛行機ホッピングツアーが企画されていました.2日か3日で8回〜16回飛ぶツアー.公式には飛行機が好きな人のために,ですが,私のような修行する人の利用も多いようです.

羽田発の8回ツアーで,高知羽田の往復も加えると2日で10回の計算.これでも経験のない多さなので,怖々申し込んでみます.朝早く高知から羽田に向かうと,次の目的地は徳島.四国に戻ってしまっています.一体何をしているんでしょう.

初めての徳島空港,しかし乗り継ぎは30分しかありません.ちょっと写真を撮り,福岡空港に向かいます.福岡ではおにぎりをつまみ,鹿児島空港へ.この時点でだいぶ非日常を感じています.

初日最後のフライトは鹿児島から沖永良部島へ.初めて聞く島の名前です.鹿児島県の離島の一つで,奄美群島と呼ばれています.小型の飛行機で沖永良部島へ到着すると,南国の雰囲気です.ホテルへバスで向かうと,同じルートの人もいるようです.大浴場に浸かると海が目に入ります.離島にいることを実感しつつ,フライトの疲れを癒します.
つづく