白鳳丸航海を終え,私は再びオーストラリアからモーリシャスに向かいます.船で10日間かけて横断したインド洋,今度は飛行機です.要する時間はわずか30分の1,約8時間で到着です.驚きの速さですね.目的地のレユニオン島はモーリシャスの少し南西,飛行機で1時間です.空港に到着すると,ホテルのドライバーが迎えに来てくれました.右側通行,左ハンドル,初めてのフランス語圏に来たことを実感します.
フランス船マリオン・デュフレーヌに乗船する目的は,より長い海底堆積物の採取です.白鳳丸で採取できる堆積物の最長が15 mとすれば,マリオンのそれは70 mに達します.70 mという長さは魅力的です.例えば1,000年に2 cm堆積物が積もるとすれば,15 mなら過去75万年間ですが,70 mなら過去350万年間に及びます.
一般的に,長い堆積物の採取はIODP船のような掘削船に頼らざるを得ず,しかしそのためには10年にも及ぶ研究提案や審査を経ねばなりません.より素早く良質な堆積物を採取する観点で,マリオンの採泥システムは世界随一です.
もう一つ,フランス船に乗船するメリットはフランスの海外領土にあります.マリオン・デュフレーヌという船の名前自体が探検家であるように,フランスは多くの海外県を有しています.南大洋ではクローゼー諸島やケルゲレン諸島が相当します.排他的経済水域が適用されるため,日本の船ではアクセスが容易ではありません.入手困難かつ長い堆積物を採取するため,今回は日本から4名の研究者が乗船しました.
船内はフランス語環境,次に英語が続きます.一応英語が共通語ですが,船内の掲示などはほとんどフランス語です.白鳳丸が日本語環境なのと似ています.嬉しいのはフランス料理,ワインも出てきます.前菜,メインディッシュ,チーズ,フルーツとフルコースです.白鳳丸は定食スタイルなので,雰囲気の違いは大きいです.
今回の航海は目的の海域まで5日,堆積物の採取に5日,帰路に5日かかる3部構成です.まずは試料処理のいろはを学びます.顔合わせも済ませると,比較的時間に余裕が生まれます.ポーカーやダーツを楽しむあたり,フランス人の陽気さがうかがえます.
私が白鳳丸の話をすると,フランスの首席研究者はマリオンについて話してくれました.白鳳丸は基本的に研究船ですが,マリオンはフランスの海外県を巡り,人員や食料を補給する船としても活躍しているそうです.
海外県であるクローゼ諸島やケルゲレン諸島に永住者はいませんが,研究所が設けられています.加えて,少人数ですが海外県を巡る観光ツアーも開催されています.そのため,観光客を含む乗船者をもてなす雰囲気が多分にあるそうです.研究者として乗船しながら,そうしたもてなしを受けることができるのは非常にありがたいと感じます.
マリオンの全長は120 m,一方で白鳳丸は100 mです.船体が大きいためにマリオンの揺れは少なく,船酔いもほぼありませんでした.各研究者が準備を整え,いよいよ目的の海域に到達します.
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