(1) 知的生産の技術/梅棹忠夫
(2) 理系のためのクラウド知的生産術/堀正岳
(3) 理系のための研究生活ガイド/坪田一男
(4) 知的生活習慣/外山滋比古
(5) 学問の技法/橋本努
「知的生産」という言葉は(1)によって生み出された.梅棹氏は考えをすべて書き留め,膨大な量のカードを作成した.メモ魔ともいえるその情熱は,恐ろしくもある.大切なのは整理することではなく,検索すること.この考えは時代を問わず通用する.
私も以前チャレンジし,カードシステムを導入してみた.なかなか書く習慣が身に着かず,肝心の見なおすことも中途半端になってしまい,頓挫した.作業環境としてはPCに向かう以上,紙媒体と電子媒体をつなげることに困難を感じていた.
それからしばらくして,(2)に出会った.(1)のアップデート版ともいえる,現代に即した技術を教えてくれた.Google,Evernote,Dropboxの活用.著者は「すぐにこの本も時代に合わなくなるだろう」と述べているが,2015年現在でも十分に役立つと考えられる.
続けて(3)を読んでみた.現在だけでなく,将来を含めた長いスパンで研究を考えることに役立った.筆者はメディアへの露出が多く,アウトプットの大切さを学ぶことができた.(1)~(3)を読んできて,研究を第一に据えた生活を少しく実践していた.しかしながら,趣味や余暇など充実するにつれ,いわゆるワークライフバランスも大切なのではと考えるようになった.
そうして悩む中で,(4)の書籍を見つけた.思考の整理学で知られる外山氏の,長年の知的生活に基づく内容.”生活を第一”と臆面もなく言ってのけるのが気持ちよかった.生活を基盤にして初めて,知的生産が成立するという立場である.
こうした自己啓発の本は,読んだ直後が最も効用が大きい.しかし残念ながら,その衝動は時間とともに小さくなってしまう.ひとつ刺激を与えてみようと,(5)を手に取った.学問を大学生やビジネスマンに限らず,すべての人が行えるものとしているのが特徴的である.技術を幅広くまとめており,賛同できる手法も,そうでないものもあった.
「知的生産」を扱う様々な本を読んで感じたことは,その技術に確立された方法はないということ.時代に応じた方法があるし,もちろん各人にあった技術がある.技術を取捨選択し,生産性を高められるような道を,これからも探りたい.