2015/06/06

県美術館













大学1年生のときの時間割決め.進級に必要な単位の他,「教職」と「学芸員」を目指す人は,受講する科目が増える.まるで進路など考えていなかった入学当時.教職に比べて学芸員は必要科目も少なく,ひとまず受講してみた.

ある博物館学の授業は,美術を専攻している教授が担当していた.始めるなり,「ここで座学するくらいなら,美術館や博物館へ行く方がよっぽどためになる.もちろん出席はとりません.最後にレポートを提出してください.」そのレポートとは,美術館展示をみて気付いたこと,について.この言を聞くや,毎回出席人数が減っていく.

私も出席をやめようかな,と半ば思っていたとき,その教授が「次回は県美術館に集合してください.実際に展示をみます.」どのみちレポートまでに展示をみる必要もあるし,次回も出席することに.県美術館を訪ね,20名ほどで展示をみる.教授は先導しつつも,「1枚でも好きな絵を見つけたら,それをじっくりみなさい.順路通りに,全ての作品を見る必要はありません.」

展示を見終えたところで,広いスペースへ移動.宮城県美術館の学芸員さんのお話を伺う.「美術館の展示には大きく2つあり,常設展では美術館の所蔵作品を展示します.学芸員は収蔵作品をどう組み合わせ,何をテーマにするか頭をひねります.一方,特別展は美術館が所蔵していない作品を展示します.特別展はテーマが決められていて,複数の美術館を巡回します.通常は特別展の入場者が多いですが,学芸員としては常設展をみてほしい.」

これまで美術館を訪れたときには考えていなかった,学芸員側からの視点.全ての作品を見るよりも,好きな絵を見つけろという先生.ひとつの授業で,美術館への見方がだいぶ変わった.タイミングよく,美術館と大学が連携する「キャンパスメンバーズ制度」が始まり,学生は特別展半額,常設展無料で観覧できるように.

常設展を訪れて,まず自分の好きな絵を探した.クレー,カンディンスキーなど抽象画家の作品が今ではお気に入り.美術的な知識はほぼなくても,抽象絵画にはイメージを膨らませられる.100点のテストのような,答えが一通りでないのが面白い.加えて好きなのは,広々とした空間に,わずかな作品しか配置しないこと.家や大学など,日常では感じられない広さがある.

学芸員さんのお話の通り,特別展には大勢訪れ,道路に渋滞もできる.一方で常設展は,休日でもゆったり作品がみられる.混雑しないに越したことはないけど,常設展でも美術館へ足を運ぶ人が増えたらいいな.おすすめは徒歩.お気に入りの作品を思い出しながら,非日常の余韻に浸る.

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