2016/12/31
本100冊からの10選
2016年に読んだ本はおよそ100冊.5年前には年間数十冊だったのを思うと,読むスピードは数倍になっている.100冊のリストを眺めて,大雑把にジャンル分けしてみる.
小説:25 エッセイ:15 社会(政治,経済,歴史):16 古典:11 ことば:9 科学:7 美術:6 災害(戦争,公害):5 知的生産:3 アニメ:3
科学はわずか7冊で,小説やエッセイが多い.私が読書に求めているのは専門知識ではなく,幅広い考え方や体験のよう.趣味として読んでいるのは「ことば」や「美術」.教養としては「社会」や「古典」.上記10のジャンルから,1冊ずつ紹介してみる.
小説:百年の孤独/ガルシア=マルケス
何世代にもわたる一つの家系の物語.百歳を優に超える人物も登場し,現実と非現実の区別がつかなくなる.ひたすら独り言をいう人物もあり,ひとつの文が3ページに及んだのは印象的.傑作として扱われるこの本は,一読しただけでは計り知れない世界を示してくれる.
エッセイ:国境のない生き方/ヤマザキマリ
古代ローマと現代の日本をお風呂でつなぐテルマエロマエ.マンガを読んで,発想の面白さに舌を巻いた.しかし著者の半生には,マンガ以上の魅力があった.イタリアと日本で育まれた人生観は,たいへんな教養と経験に支えられている.地球人がぴったりくる,豊かな人生.
社会:18歳からの民主主義/岩波新書編集部
選挙権が18歳以上に改正されるのを機に,18歳~101歳がメッセージを寄せる.姜尚中さんは政治学者でありながら,在日韓国人として選挙権が与えられないことに触れる.今年亡くなられたむのたけじさんは,人生を5つのフェーズに分け,どの段階でも政治と関わりがあると語る.年齢立場は違えど,まずは関心を持つことの大切さを知る.
古典:オイディプス王・アンティゴネ/ソポクレス
スフィンクスの問い,エディプスコンプレックスなどは現在でも通用することば.何千年も受け継がれてきた物語は,人間の普遍的な性質を教えてくれる.人の疑いを解くことは難しく,悲劇は繰り変えされる.しかし絶対と定められた運命にも,抗わずにはいられない.
ことば:ちいさな言葉/俵万智
わが子は天才ではないだろうか.きっとどんな親も一度は抱く感情である.ことばのプロである著者でさえ,わが子の視点には驚きを隠せない.「揺れながら前へ進まず子育てはおまえがくれた木馬の時間」短歌と相性の良いツイッターも始めながら,息子と過ごすみずみずしい日々.
科学:想像するちから/松沢哲郎
サルよりも人間に近いチンパンジー.その行動や生態を研究することで,どこまでが人間と共通し,どこからが人間に特有の性質なのかを明らかにできる.チンパンジーは片足を失っても絶望しない.その日暮らしだからだ.人間は絶望してしまう.しかし明日を想像する力があるから,希望も持つことができる.人間とは何かを考えさせてくれる.
美術:気まぐれ美術館/洲之内徹
画廊を経営した著者が記すのは,絵の辿る数奇な運命.一枚の絵にまつわる人間模様,絵から生まれる人間関係もある.美術館で鑑賞する作品だけが絵ではない.人から人の手へ移動する,そんなケースが実は多いのかもしれない.絵と画家の魅力を存分に伝えている.
災害:三陸海岸大津波/吉村昭
明治,昭和の大津波を中心とした記録文学.東日本大震災より前に出版されている.昭和の大津波において,明治の経験は十二分には活かされなかった.地震の発生時間が違うから,津波は来ない,という迷信のため,避難は遅れてしまった.来る災害は防くには,経験に学ぶだけでは難しい.
知的生産:知的トレーニングの技術/花村太郎
様々な文献を示していて, 独学にはよいかもしれない.読書術では全集通読が勧められる一方,「万巻の書をまえにして,全部読破してやろうなどという考えは放棄せよ」とも語る.私が読んだ100冊は,図書館の棚一列にも及ばない.だからこそ,何を読むか.
アニメ:言の葉の庭/新海誠
雨の日にだけ出会える二人.万葉集の句が想いを代弁する.大ヒット中の「君の名は。」は映画と小説でほぼ同内容を扱っている.「言の葉の庭」は映画が40分ほど,しかし小説は2時間以上の内容がある.梅雨時に観たい,読みたい作品.
オリンピック選手は,4年間のトレーニングを一日単位で計画するらしい.読書は明確なゴールがあるわけでなし,メダルがもらえることもない.しかし日々の読書が積み重なれば,相当量のトレーニングにはなる.来年は何を読もうか.
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